Uni-Type® 開発コンセプト(続き)
3. さらに、今日求められている2つの課題。
日本文が、かなの使用が増えて、「白くなった」といわれて久しい。私が以前教えていた大学でも、学生のレポートは「白い」ものが多かった。そこに、外来語カタカナ表記の増加が加わった。「パリ」か「バリ」か、「トナー」か「ドナー」かが明瞭に区別されることが重要になってきたのである。1つ目の課題は、濁点である。
また、情報化社会の必然として、数字使用が増加してきたことである。何時に約束するかとか、いくらで売買するかなど、数字情報が日常的に飛び交っている。2つ目の課題は、数字の重要性である。
1つ目の課題である、濁点は、フェースの大きな書体においては、識別性を確保するのは非常に難しく、それを実現した書体はない。
Uni-Typeでは、伝統的な日本の書体ポリシーを取り入れる画期的な方法を考えた。それは、濁点の点の長さをあえて不均等にすることである。
もともと書道の世界では濁点の不均等は自然に行われており、それによって筆の流れを表現し、読みやすさをつくってきた。
Uni-Typeは、この画期的方法で、フェースが大きいにもかかわらず識別性の高い文字とすることに成功した。
2つ目の課題である、数字は、従来、見分けにくかった「3」、「8」、「5」、「9」について、とくに明瞭に識別できるようデザインした。
以上2つの課題の他、Uni-Typeでは、直線はあくまで直線とし、微妙な曲りを排除。曲線は、直線と対照的にゆったりとした美しさを追求している。
従来、高評をえていたLim Uni-Typeの実績のうえに、今日書体に求められている課題をふまえて、ユニバーサルデザイン書体とすべく、すべてのかなと漢字、合計7000余字をリニューアルし、Uni-Typeが新しく誕生した。
4. よりユニバーサルとするために。
読みやすい文字であるための要因は、大きくは、(1)文字自体のデザイン、(2)文字組み、(3)文字の背景、(4)文字表示の媒体(ディスプレイ、紙など)、がある。ユニバーサルデザインをいっそう進めるためには、(1)文字自体のデザインを改善していくと同時に、(2)〜(4)のことがらも協同して行なわなければならない。携帯電話本体やパソコンディスプレイのハードとソフトのさらなる開発であり、例えば文字サイズや行間、背景色などの設定も、自由に設定できるなどの仕組みづくりである。
書体表示のハードとソフトとが協調して、多様な人々の要求に選択的に対応できる環境をつくること。その結果として、だれにでも読みやすい文字を提供すること。それがユニバーサルデザインとしての読みやすい書体の実現となるはずだ。