さまざまなデザイン領域において、ユニバーサルデザインがいわれている。ユニバーサルデザインとは、ロナルド・メイスが提唱したデザイン指針である。デザインは、だれにでも公平に使えるべきであり、使いやすくあるべきであり、安全であるべきである、など7原則からなっている。
今日、ユニバーサルデザインがブームにまでなった背後には、デザイン本来のあるべき姿が見失われていたことがある。では、書体デザインになにが見失われていたのだろうか。
近年の社会における急激な変化は、なにをおいても「ユビキタス社会」(どこにでもコンピュータがある社会)である。そして、高齢化の到来である。この急激な変化に、書体デザインがついていっていない。伝統的な、印刷媒体(紙媒体)のままの文字を、携帯やパソコンのディスプレイに使用していることに問題がある。
ユニバーサルデザインとしての書体とはどういうものなのだろうか。なにが求められているのだろうか。ディスプレイ表示される文字について考えてみる。
千葉大学グランドフェロー
千葉大学デザイン工学科教授
(H18年退官)
LIM・技術顧問
従来、印刷のための書体は、表示する文字量が多いなかでバランスが意識され、フェースが小さくなっている。しかし、光学式表示器で表現されるUni-Typeにおいては、文字量が少ないためフェースを大きく取るデザインが求められている。端的にいえば、小さな文字にしても、短時間で明瞭に分かる「識別性」の高い書体である。
新しい書体デザインでは、「フェースを大きくする」と同時に下記のコンセプトにより、格段の読みやすさの実現を目指した。美しいことは、いうまでもない。
上記のことは、実は、株式会社リムコーポレーションが開発したLim Uni-Typeでかなり実現されている。 リムは、ディスプレイ文字デザインに先駆的業績をあげた会社として高い評価をえている。その上に、上記コンセプトにより、識別性のいっそうの向上をはかった。