ニュースリリース

2009/03/03   ケータイフォントコンペ2009選考結果

優秀賞2点 入選3点 特別賞1点が決まる

◎総評
応募総数は15点。4名の審査員で約2時間がかりの厳しい審査会となりました。その中から「優秀賞2点」「入選3点」「特別賞1点」が受賞しました。審査では、「書体デザインとしての魅力や完成度」「ケータイでの表示を主にしつつも、新しい書体デザインへのチャレンジ」を中心に見させていただきました。多くの意欲的な力作に触れ、内容の濃いフォントデザインコンペであったと思いますが、ひとつズバ抜けたものがなく、残念ながら今回はグランプリ該当作品なしとなりました。

書体の嗜好は、横組みの普及や角ゴシック体の使用の増大にともない、明朝体の占める割合が近年減少傾向にあります。今回の応募書体は、非明朝体・非角ゴシック体に集中しており、筆書体系・丸ゴシック体系が大勢を占めていました。若い人たちの感性が、角ゴシック体から丸ゴシック体への嗜好変化を示しているのかもしれませんが、その骨格も従来の幾何的様式を採用せず、より人間の手を感じる傾向にシフトしているように感じました。(向井)

応募作品は制作者やグループの意欲が伝わってくる力作ばかりでした。入選した作品と選外の作品のあいだに大きな差はないと感じています。(岡澤)

審査会では、ビジネス目線で捉える審査員と純粋に書体デザイナーの制作者の目で捉えるのでは軸が違い、多様な議論がでました。読みやすくきれいなデザインという軸と、面白さが感じられる書体が選定理由になったと思います。応募作品には個性豊かなデザインがたくさんあり、本当に楽しませていただきました。(間淵)

◎グランプリ:該当なし

◎優秀賞:さゆり(チーム「さゆり」、代表:後野七海さん)
応募作品中で書体として一番まとまっています。文字の形・大きさ・太さと、どこをとっても破綻がなく、組版サンプルで組み合わせた漢字とのバランスも非常によくとれていて、完成度は一番高いと感じました。一見地味にみえますが、そこまで全体をまとめあげたことが評価につながりました。(岡澤)

情緒あるきれいな書体だと思います。(間淵)

◎優秀賞:小うめ(チーム「蚊」、代表:谷口連平さん)
ちょっと懐かしさを感じるエレメントを採用して、かな書体としてうまくまとめあげています。ひらがなに展開するにはむずかしい直線的なエレメントだと思うのですが、機械的な印象になっていないところに魅力を感じました。全体を長体にまとめたことで字間のアキが生まれ、組版サンプルの軽快な印象を生んでいます。(岡澤)

面白さの軸に乗った書体だと思います。(間淵)

◎入選:はんなり(チーム「はんなり」、代表:西小路瑶子さん)
古典的な仮名のスタイルを採用しているのだと思いますが、そこから少しはみ出している感じが魅力的な書体です。文字の大小を大胆につけたところや、ひらがなとカタカナに微妙なウェイト差をつけたところが、そうした印象につながっているのでしょうか。組版サンプルからは、独特の心地いい流れを感じました。(岡澤)

きれいな書体に面白さのエッセンスを取り入れた書体です。(間淵)

◎入選:おりがみ(西影ゆりかさん、京都精華大学ビジュアルデザイン)
コンセプトの組み立てから実際の制作まで、作者がずっと楽しんで制作したのが伝わってくるような書体です。文字の大きさを揃えすぎなかったことが字並びにリズムを生んでいます。折りの角度や太さなどにも細かな調整がみてとれますが、ざっくり作ったように見えるところがいいと思います。(岡澤)

まさにコンセプトの面白さが目を引きました。(間淵)

◎入選:おかあさん(チーム「ぴちてぃ」、代表:細川華歩さん)
書いたあとに一工程はいっているような人工的なアウトラインで作られているのに、手書きの筆勢が感じられるのが印象的な書体です。丸ゴシック体は太くなると単調になってしまうものですが、この作品はそこをうまく回避してます。文字に大小をつけたのもよい効果を生んでいます。(岡澤)

ケータイの世界では、「気持ちを伝える」書体があっても面白いという点を評価しました。ケータイでの表示特性も良好な書体だと思われます。(間淵)

◎特別賞:かじか字(梶 安紀子さん、京都精華大学ビジュアルデザイン)
タリングやタイプデザインの完成度が上がるにつれて、文字から消えていってしまう魅力が、不思議とこの作品には残っていると感じました。この作品の場合その魅力は、けれんみのない素直な骨格からきてるようです。ちょっと幼くみえるアウトラインの作り方にも愛嬌があります。(岡澤)

■今後に期待する新しい書体デザイン
現在の日本語フォントの大勢は、正方形の中にデザインされたものです。しかし、横組みの割合が増大する中で「横組み専用書体」はほとんどありません。単に正方形の枠内で横幅を拡げた仮名のデザインを越える発想を、今後に期待したいと思います。また、書体の面でいえば明朝体、ゴシック体、伝統的筆書体をミックスした、基本書体としての中間書体がもっとあってもいいように思います。(向井)

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